子育て いじめ 不登校 ひきこもり 暴力 アルコール 薬物依存 拒食 過食症 リストカットなどの予防、解決を考える会。北海道内観療法懇話会 臨床内観療法研究会
 
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家族から虐待を受けた女性の家族内観の効果
〜吐露作業によって、親子関係が修復した一症例〜
(医)耕仁会札幌太田病院 急性期治療病棟
○赤平 由子  土江田 つや子  小田島 早苗  阿部 一九夫

1.はじめに 
 入院早期に病棟内・内観療法を導入する際は、恨み・つらみなどの陰性感情を傾聴する、家族間調整を行うなどの工夫が必要である。今回、幼少期の虐待・学校でのいじめられ体験から対人恐怖となり、将来への不安、自信喪失、過呼吸発作などのパニック症状を呈した30代女性に対し、早期に病棟内・内観療法を導入し、また家族内観を実施した。その結果、パニック症状の改善、親子関係が修復され、早期退院へと結びついた一症例の経過を報告する。

2.症例紹介
A氏30代女性。両親、本人、妹の4人家族。幼少期より母から、ハサミを投げつけられるなどの暴力を受けていた。さらに小中学校ではいじめを受けていた。そのため、対人恐怖が出現していたが、高校を卒業し就職もでき、仕事上に支障はきたさなかった。しかしX年、勤務先の都合で自主退職となり、再就職活動を始めるも決まらず、焦りと自信喪失からX+1年、過呼吸などのパニック症状が出現し、希死念慮もみられ、家族の勧めで当院受診し入院に至った。

3.看護経過
 入院当日、自室での病棟内・内観療法を導入した。しかし母への陰性感情が強く、拒否的でありパニック症状が出現した。そのため多職種での症例カンファレンスを行ない、今後の対応について検討した。その中で母からの虐待という情報を得、内観初期には、主に母への陰性感情の表出を目標とした。その結果、時には情動を伴い、「二度と信じたくない、親がそんなに偉いのか」など恨みつらみを表出し、表情に変化が見られ、パニック症状も軽減した。内観中期から終了にかけて、A氏の身体症状を考慮しつつ自室から内観室へ段階的に移行した。内観が深まるにつれ、母にしてもらったことを認める発言があり、徐々に感謝の気持ちを表出するようになった。また、パニック発作時には腹式呼吸をするなどの対処法も学んだ。内観終了後、家族関係の調整も必要であると判断し、家族内観を実施した。A氏は母から受けた暴力による悲しさ、辛さを表出し、さらにそれによって妹に向けた暴力、妹が自分の子どもに向けた暴力の連鎖に気付いたと泣きながら訴えた。それに対し、母から反省の言葉がみられ、また父は長い間、気付けなかったことを言葉少なに詫びた。本人は今までのことを全て吐き出したことで「すっきりした」と話し、「もう母さんを恨んだり憎んだりしたくない。これでもう終わりにしたい」と家族に伝えることができ、家族間での率直な情緒交流を図ることができた。その後、A氏は他患と交流する中で、同じ境遇の入院者へのピアカウンセリングを行なうなど、積極的に治療プログラムに取り組み、自信回復へ至ったようであった。「今後はカウンセラーの仕事をしたい」と退院後の目標もでき、入院期間約1ヵ月で退院に至った。

4.考察
 A氏は幼少期の外傷体験を背景とし、再就職の失敗が契機となり、パニック症状などが出現したと考えられる。そして症状そのものの緩和と並行し、背景となる外傷体験の直面化、解決を目標とするため、早期の病棟内・内観療法の導入が必要であった。しかし強い陰性感情のため、カウンセリング的傾聴など柔軟なアプローチが求められた。その結果、抑圧された感情の表出が可能となり、主体的に過去の事実に向き合うことで、自己認知が修正され、自信の回復に寄与できた。またそれを基礎とした家族療法を行ない、家族システムに変化をもたらし、家族、世代間での暴力の連鎖を断ち切る一助となった。

 病棟内・内観療法は、その治療効果のみならず、不適応の背景を的確に把握するなど、その後の看護展開にも影響を与える。特に家族関係に問題がある場合は、その調整など様々な工夫が必要であることを改めて実感することができた。





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