子育て いじめ 不登校 ひきこもり 暴力 アルコール 薬物依存 拒食 過食症 リストカットなどの予防、解決を考える会。北海道内観療法懇話会 臨床内観療法研究会
 
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  子育て・いじめ・不登校・ひきこもり・暴力・アルコール・薬物依存・拒食・過食症・リストカットなどが社会問題となっています。これらの予防・解決に内観法、内観療法が有効であると考え、その予防・解決について考えます。

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内観療法からみえてくる親子関係の問題点
大西 祥子

はじめに 
 養育環境、とりわけ親子関係が子供の人格形成に与える影響は極めて大きい。当院を受診した不登校、家庭内暴力、非行、シンナー、摂食障害、リストカット、援助交際などの問題行動の背景はさまざまであるが、その一つに表面には見えづらい親子関係の歪みがあると感じられる。受診時の子供たちの親への不信感は、想像以上に強いのである。

 世界の中で日本は、子供を中心とした家庭生活が営まれ、おおむね子供は大事に育てられているといわれるが、子供はどのように受けとめているだろうか。

 一般的に「叱られもしたし体罰受けた。しかし自分は親に信頼され受け入れられていた」と受けとめている場合は、情緒的に安定した性格が作られ、困難に出合ったときの適応力がある。これに反して、いくら大事に育てられても、親に愛されていなかった、受け入れられていなかったという感じを持てば、どことなく暗く、ひねくれた反抗的な性格が作られ、困難に直面した時、さまざまな問題行動や不適応が生じるといわれている。

 内観面接をしていると子供時代に親をどのように認識し、どんな親子関係が展開していたか非常にクリアに見えてくる。

 今回は、内観面接を通して見えてくる親子関係の問題点の一端を、若干の考察を交えて述べたい。

臨床場面で出合う子供たち
 親に受け入れられていない感じを抱いているケースが多いように思う。なぜ子供は受け入れられていないと感じるのであろうか。先に述べたように、外目からは見えづらい親子関係の歪みのなかの1要因として、夫婦不仲の問題があり、それが親子関係の歪みをもたらしていくケースも多い。また父性性、あるいは母性性の弱い家庭の問題もある。

 以前のように片親家庭など、ハンディキャップのある家庭だけではなく、最近はむしろ外見的には普通の家庭に見える家庭で、心理的葛藤が要因となっているケースが多くなっているのが特徴と思う。

受診時の子供たちの特徴
 受診時の子供たちは、自己評価が低く、親への不信が強く、他者の意見を受け入れず、罪悪感を抱いている一方極めて反抗的、攻撃的か無気力といった風情で受診してくる。自分とその周囲に対する認知は、孤立化してマイナスの評価に満ちている。しかも、心理検査(SCT)でみると、例えば「私の母は‥ふつう」「私の父は‥別に」「将来私は・・別に」という表現にみるように、自分の気持ちを言葉にして、表現することが稚拙なことも特徴である。

内観を通して見えてくる親子関係
 子供は内観により、それまで抱いていた親への認知の誤りに自ずと気が付き、認知の変換が生じ、それが問題行動の解消や適応的行動への転換をもたらす。

 子供は親をどのように受けとめていたのか、内観でどう変化したかを本人のリポートから報告したいと思う。

 もう1点は、父性・母性の力動関係のバランスを座標軸に分類して考察を試みた。そのバランスが崩れたとき、子供にどんな問題が生じるのか、症例は少ないが子供理解の一助とすると同時に、親のあり方や親自身の内観の必要性に触れたい。


[症例A・B]不登校・家庭内暴力群;父性欠如群・・母子家庭。

 母子家庭でも母が、母性と父性を発揮して、あるいは身近に父性的役割をはたす人がいて、問題なく育つ例は多いが、このA君・B君の母に共通していたのは、母性がつよく、母自身のうちにある父性を男の子に十分伝えることができなかったことが、不登校の要因と思われる事例である。A君・B君共に家庭ではわがままで、暴君、思春期ともなれば母だけでは抑えがきかなくなっている。姉達はしっかりして成績良好であることも共通しており、姉達は同性として母性を上手に取り込んでいることがわかる。

 A君の内観中書いたリポートより。「子供の頃おじいちゃん子だったが、小2頃から父親代わりにお説教するようになり嫌いになり、人生をメチャクチャにされたと思っていた。内観後は、甘やかされて育った僕に叱ってくれるのは、祖父しかいなかったことに気づいた。死ぬ前に内観していれば、お礼を言うことができたのに」

 A君は父親代わりの祖父の内観により、父性への否定的認知が肯定的なものに変化したことは、登校への足掛かりになったと思われる。


[症例C・D,E]摂食障害群;父親は健在であるが、どちらかというと家庭での存在感が薄く、母性性優位の家庭である。母のタイプは父の父性が弱い分、子に対する支配性は強くなるが、過保護、過剰期待、母子密着と表現形は異なっている。その背景には夫婦不仲の問題も見られる。幼少期良い子であったことも共通している。ただ内観申語られたことは、C子・D子共に表面的には良い子を演じながら、金を盗んだり隠れて悪いことをする習慣がついていた。母の愛を失わないための自衛的行動であったと解釈される。

 これらの症例は、思春期に子の問題が生じて父親が介入しても疎ましく、父なんかいなければいいのにといった心情が話される。幼少期に父性性が伝わっていなければ、問題が起こってからでは遅いが、内観によりかなり認知の変化が生じている。

 共通していたのは内観前「父は自分には無関心だったので、居ないほうが楽だと思っていた」内観後「父は男だから感情を出さなかっただけと知り、父の本当の優しさ、ありがたみを知り、恨んで申し訳なかった」と変化している。

 これらのケースを通して感じることは、父性という枠組みのない子供たちの、怖れというか、畏怖の念というかそのような感覚が希薄なことである。今の子供たちにあまり育っていないのは、この感覚かも知れないと思う。内観することで、畏怖・畏敬の念が生じるように感じる。


[症例F]母性の深刻な喪失を休験した女性の例。内観で語った事から推察すると、幼少期実母にかなり心理的に支配され、密着関係にあった。しかし突然生皮を剥がされるように母は駆け落ちし、それでも母を待っていたかったのに、父は遠くに引っ越しを決め、再婚してしまい、F子の母性をめぐる混乱は大きかったことは想像に難くない。20代後半となり自分も結婚などを意識したこの時期に内観した意味は大きく、効果も高い例である。彼女の行動からみると、境界型人格障害を疑われるケースであるが、内観により短期間に回復した。

親が内観することの重要性
 子の親に対する認知は、想像以上に否定的である。それは先に述べたように、目に見えづらい心理的葛藤が情景にあって、子供の環境への適応力を弱めているが、子供には見えない。内観では親への否定的感情を短時間で修正し信頼関係や感謝の念を抱くように変化する。親への認知が肯定的に変化したとき、すなわち親から愛され受け入れられていたと確認できたとき、適応力が増す。

 次にそれをいかに継続させるか、親の在り方が大きく作用する。我々内観面接者としては、親をはじめ家族全体の関係性が変化するのを願うのである。そのためには親自身も内観をすることが望ましい。内観して感じる思いは、子への深い共感となって伝わっていく。その感覚こそ子供の気持ちを理解し、支えるまなざしとなると思うのである。時には厳しいしつけも、子に受け入れられていくでしょう。

 また内観後は、自分の気持ちを言葉で表現できるようになるなど、表現力が増すことも心理療法としての効用であると同時に、親子のコミュニケーションを、スムーズにしてくれるのである。

 なるべく早い時期に、家族が内観する必要を強く感じている。

<内観施設案内>
札幌内観研修所:札幌市手稲区手稲本町5条2丁目 TEL 011(682)9916
釧路内観研修所:釧路市若草町17番13号    TEL 0154(23)3784
札幌太田病院 :札幌市西区山の手5条5丁目   TEL 011(644)5111





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