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  子育て・いじめ・不登校・ひきこもり・暴力・アルコール・薬物依存・拒食・過食症・リストカットなどが社会問題となっています。これらの予防・解決に内観法、内観療法が有効であると考え、その予防・解決について考えます。

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内観の中断を要求した不登校生に対する
父的・母的かかわり
札幌太田病院 内観指導者
根本 忠典

1.はじめに 
私が内観療法課で勤務させていただく事になってから3ヵ月が経過した。入職時の研修として集中内観を体験し、内観指導者は初めての経験であり、業務を覚え、内観療法を学ぶことに必死だったので、あっという間に過ぎてしまった。この3ヵ月間、多くの事を学んできたが、集中内観療法を受ける患者のほとんどは、不登校、シンナー乱用、アルコール依存症、薬物依存症、分裂病やうつ状態の方達たった。今回、不登校中学生が内観した際、内観中断を要求し継続が危ぶまれたが、種々の介入により良好な経過をたどった症例を経験した。筆者にとっても非常に学ぶ事の多かった症例なので、若干の考察を加え報告する。

2.症例概要
 症例:A君、中学校2年生。母と二人暮らし。

 診断名:不登校

 生活:A君が小学校5年時に、父母が離婚した。小学4年生の頃から父母は別居し、A君は父と暮らしていたが、生活が不規則になり遅刻が多くなった。小学5年生から母と暮らすようになり、11月から1月までの3ヵ月間転校したがなじめず、元の学校へ戻った。しかし、週1回程度欠席し、常に遅刻という登校状況であった。

 中学入学後、月曜日のみ休んでいたが、2学期からは全く登校せず、母が区の相談所等に相談し、その指導でY中学校の相談学級に通う等試みた。中学2年生からは元の中学に戻ろうとしたが、ずるずると行かないまま1学期の終業式の日を迎えた。心配した母がA君を連れて来院、即日入院となった。

 主症状:不規則な生活の為、朝起きられない。夜中の2、3時までTVゲームをしている時もある。体も急激に太った。また、精神的に負担がかかると、ひきつけを起こしやすい。

3.集中内観の経過
 A君の母は、規則正しい生活と登校再開を願っていた。しかしA君は、「特に治したい事はない。入院どころか、通院すら望まない」という等、問題意識も入院治療への動機づけもない状態だった。内観初日に書いてもらっている「集中内観を行う理由と決意」というレポートには、「退院する為に内観を仕方が無く行うが、本当は嫌でたまらない」といった内容の文章を書いている。内観一、二日目は、A君が法座をこっそり抜け出し、廊下やデイルームで他の患者さんと話す姿が何度も見られた。その度にA君を法座の中へ誘導し、面接を行うのだが、簡単な応答をするのみで時に泣きじゃくるといった状態だった。三日目には、内観三間に対し、「もう、テーマを与えられても調べたくない」と拒否的で、一時間近く泣き続け、微熱、ひきつけを起こすといった症状もみられた。どう対応してよいかわからず、すぐに担当医に相談した。担当医はA君を厳しく説得し、吉本原法では7日間のところを、年齢も若いので5日間に短縮し、内観を続行することを指示した。筆者ともう一人の面接者、そして援助者である看護婦達は、指示的な言葉を使わず、極力励ましの言葉を主として受容的に接した。担当医は、自らA君にジュースを買って与えるという事もあった。以上の様な関わりの中で、A君のストレスや不安感が和らいだのか、4日目からはもう泣く事もなく、落ち着いた様子で内観に取り組み、必要以外に法座から出る事もなくなった。

 内観最終日(5日目)に書いてもらった「母に対する自分を調べてわかったこと」というリポートには、「一、二日目に母を調べてもあまり思い浮かばなかったけど、最後にもう一度母を調べてみて、色々な事が浮かび、一度目はきちんと取り組んでいなかった事がわかった。また、内観を行う事によって、母が僕の事を一杯思ってくれている事がわかり安心した」といった文が書いてあった。

 A君が内観を終了した翌週の日曜日には、担当医が気分転換にと、A君を2時間位の山登りに連れて行った。病院に帰って来たA君は、生き生きとした表情で、「外に出かける事ができて嬉しい。」と話された。

4.考察
 A君が内観を拒否し、微熱、ひきつけを起こした時、治療者の関与の仕方が一番重要だったと思う。最近の不登校の原因の一つに、特にいじめ等の問題がないにも関わらず、学校というストレス場面から逃避、退避してしまうケースが多い。A君も、父母の離婚というストレスはあったものの、学校に通わなければならないという目の前にある現実から逃避し、様々な身体症状を呈し周囲の者を操作しつつ不登校状態になった。それを内観中にも持ち込んだ。A君が泣きじゃくっている時、「かわいそう」と同情する職員の声も聞こえたが、主治医は、「なぜ今、内観を行う事は必要なのか」と強くはっきりとした態度で、いわば父的な関わり方で説得した。しかし、その一方でその主治医は自らジュースを買って飲ませたり、面接者である筆者らが面接を終了した時や、看護婦が内観室へ誘導する時など、内観の深化に差し支えない範囲でそれぞれが「がんばれ」といった励ましや受容的態度、いねば母的関わりで接した。ただ単に、内観三間を尋ねるだけでなく以上の様な関わり方により、A君の不安感、ストレスを和らげ安心感を供給したのだと思う。また、川原ら※1)によると、内観療法において全ての精神療法がそうであるように、現状を打解し解決したいとの、患者の強い治療意欲が必要であるという。治療者の父的、母的関わりにより、A君自身が自己の心理的問題を解決するのが重要であるとの認識を持ったのであろう。

5.その後
 内観前のA君は、職員の質問に対し、もじもじした様子で頷くだけであったが、内観を終え登山から帰ってきてからは、生き生きとした表情で、職員の質問に対しても大きな声ではきはきと答えられる様になった。

 その後A君は、落ち着いた様子で2回目の内観を終え、中学校の始業式から1週間は病院から通学した。その間、「やっぱり学校は楽しい」と話されている。現在は自宅に戻り、元気に学校へ通学している。

 最後に、長期にわたる不登校状態がわずかの短期間の集中内観によって改善されたことは、他の治療法にない特徴であると思う。

 これからも症例を重ね、内観療法について学んでいきたいと考えている。

引用・参考文献
1)川原隆造:内観療法、新興医学出版、1996.

2)長谷川京子、他3名:不登校児内観療法中の看護者の援助、第14回日本内観学会大会論文集、日本内観学会出版、1991.





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