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学校教育に内観を取り入れて
20年にわたる経験から
多布施内観研修所長
池上 吉彦

学校教育に内観を取り入れて 20年にわたる経験から 
 会場の前のナナカマドが赤く色づいていました。佐賀あたりでは高い山でないと見ることができませんから、平地にあるのが大変珍しいのですが、昨年南チロルで内観の国際会議に参加して、ナナカマドの色づきを見て参りました。札幌と緯度が同じだそうです。ヨーロッパでも、オーストリアのフランツ・リッター氏とか、ドイツのゲラルド・シュタイン氏らが内観研修所を開いていますし、日本やヨーロッパからそれぞれ30人程の内観体験者が集まっての国際会議でしたが、内観に関しての価値判断が全く同じなのに驚かされました。内観は、人間共通のものを揺さぶるものだと思います。先程控え室で郷久先生と、内観もヨーロッパから逆輸入されてから見直されるのではないかなどとお話ししたところでした。

 本日は北海道内観懇話会のお招きにより、私の体験をご報告する機会を作って頂いたことに、心より感謝申し上げます。札幌太田病院の太田先生は、1974年から内観療法によって多くの患者様をお救い頂いており、卓抜たる頭脳と蓄積された学才とご経験によって、内観の学問的な側面からの指導を頂き、常日頃からご尊敬申し上げております。その太田先生からお前の「学校内観」の経験を話に来いと言われては、一も二もなく喜んで文字通り飛行機で飛んで参りました。こうして皆さんと相見えますのは縁と申しまして、ここにあなた方がおいでになることになっていて、私が何か話すことになっていたということです。

 さていかにも長い演題ですが、念のため当時のレポートを調べ直してみましたら、
1976年12月 第2学年 9名 喫煙 学校謹慎5日間 内観による作文
1977年9月  第3学年 2名 飲酒喫煙 外泊 バイク無免許運転事故 無期停学 集中内観指導
となっていて、私の定年退職が1996年ですから、嘘偽りなく20年でした。

1.内観を導入するまで
 私が大学を出た年は教員の口がなく、就職浪人で大学の専攻科に入ってお茶を濁し、翌年山村の中学校の国語と保健体育の教師を2年やりました。共同風呂があったり、まだ夜這いの残り香のあるのどかな村で、独身の私は毎晩宿直をしては酒を飲んでいました。

 そして3年目、農業高校から誘いがあり高校教師となりました。週28時間もっていたのが18時間となり、高校は暇なもんだなあなんて呑気に構えていたら翌年補導部長をやれということになってしまい、地獄のような忙しさに見舞われることになりました。いまは生徒指導と呼ぶようになっていますが、当時は補導部、県補導連盟等、生徒取り締まりというニュアンスが強かったのです。ただ私は処罰が嫌いで、家庭謹慎・停学・無期停学・退学という経路をたどって、一番指導が必要な生徒を手放すことに大変疑問を感じていましたから、処罰ではなく生徒の人間性を向上させる方法を模索しました。基本に、「退学させない」ということを置いていましたので、職員会議ではいつも揉めて、深夜にわたることも再三でした。

 4年ほどやらせてもらいましたが、理想的にすぎるということで降ろされて、次の主任の厳罰主義を生んでしまい、結果的に悪いことをしてしまったようです。

 この模索時代に、図書館で内観研究所の吉本伊信氏から送ってきていた「内観のしおり」という冊子を偶然手に取ったのが「内観」との出合いでした。この理想主義のケツの青い自己中心的な教師は、30を越して山の中にある鄙びた温泉町の農業高校の分校に転任になりました。生徒指導主任となった私は無処罰の教育をめざして、まずすべての問題に対して停学ではなく、学校で工夫した指導をすることで対応してみました。その中で「内観法」を参考にした作文指導も取り入れましたが、これが具体的に内観を学校に応用した初めです。


2.内観の導入
 私が分校で内観を始めたのは独自で、したがって全くの手探りで始めてしまったのでした。

 「退学をしない、させない」方針を確認し、いわゆる「処罰」をしない方向も決めました。

 ところがそこに問題がやってきました。冒頭に申し上げた、1977年9月の生徒会役員2人による、飲酒・喫煙・外泊・バイク無免許運転・事故という事件です。無論、即退学論が出て来て当然です。しかしせっかく「退学をしない、させない」方針で来たのだ、停学にしながらそれぞれに何かやってみようではないか、ということになり、担任はクラス改善、生徒会係は生徒会改革などに取り組むことを申し出、私が「集中内観をはじめの1週間やってみたい」と申し出て、職員会議の了承を得ました。

 私は大学で心理学を講じていた父の書棚から『禅的療法・内観法』という本を借りて、本を手引きにして書いてあるとおりにやりました。古い襖に手を入れて、2枚つないで白い布を掛けて屏風とし、内観者には内観専一にとあったので、掃除も洗濯も引き受け、食事は家庭科の先生に手伝ってもらい、風呂は保育実習用のベビーバスにお湯を張って、「どうぞお入り下さい」と丁寧な物腰で入ってもらいました。

 今思うと、ひとり泊まりこんで、面接から身の回りの世話まで一手に引き受けて、私のほうが緊張の連続だったようです。生徒が何を答えたか覚えていないありさまでした。にもかかわらず、4日5日と経つと生徒の様子が変わり、懺悔の涙を流すようになりました。そんな夜は嬉しくて、私も星空を仰いで涙を流したものです。

 7泊8日、生徒は帰っていきました。翌日一人のお母さんが大きな鮨桶に、自分で握った鮨をどっさりお礼に持ってきてくれました。もう一人のお母さんも飛んできて、息子がゴロッと変わったと満面の笑みをたたえて報告してくださいました。「内観の栞」に『一週間で人間がゴロッと変わる』と書いてあったのはやはり本当のことだった、と思いました。それに学校のいわゆる「処分」でこんなに喜んでもらったのは初めての経験でした。

 ここからこの分校は、どんな問題にも「内観」で対処することになりました。翌年の学校要覧には、「放校・退学をさせないように努める」という文と、「個人指導では、内的変革を目的とした内観を実施し、より充実した人間形成をはかる」という文が新たに加わりました。内外に内観教育導入を明らかにし、無処罰の教育の第一歩が記されたのでした。

 とはいうものの、実際にやってみると内観に関してわからない点がいろいろ出てきます。これは誰かが集中内観を体験すべきだ、ということになり、私が年次休暇をもらって奈良県大和郡山市の吉本伊信先生の内観研修所に行くことになりました。内観を取り入れた責任上、止むを得ずというところでした。


3.集中内観の初体験
 1978年4月16日から27日までの11日間の集中内観が私の初集中内観であります。軽い気持ちでした。生徒をどのように内観させればよいか実地指導のコツを習いに来ました、という程度のものでしたが、いやあ、こんなお粗末な、情けない奴だとは。あんまり情けないので死のうかとさえ思いましたが、吉本先生にご迷惑がかかってもと思いとどまる心の一幕もありました。

 その後宿善開発に行き着くまでに以来18年かかることになりますが、この第1回目の集中内観で酒を飲まなくなりました。夜毎一升酒くらって、朝帰りというていたらくでしたから、本当は札幌太田病院に入院するべき患者だったかもしれません。

 集中内観が終わって酒を飲まなくなって、その分貯金をして、家族の内観行きの費用にしました。何しろ家族の中の一番の悪人が内観してゴロッと変わったのです。父も母も、妻も、長男も次男も長女も内観に行きました。学校の方はというと、テープを聞かせるという方法が導入され、いっそう効果が表れるようになりました。


4.学校内観のアンケート調査結果
 1978年8月にある会で発表したリポートに分校の生徒に対する簡単なアンケートがあります。設問は、
《(1)機会があればやってみたいか
 (2)停学に比べて内観をどう思うか
 (3)内観で人間は向上するか》というものです。

 結果は(1)機会があればやってみたいは24.7% やりたくないが32.6% どちらでもいい42.7% で、あまり人気がない。やはり1週間泊まり込みで自分を調べるのは辛いですからね。

 (2)停学に比べて内観がいいは57.3% 駄目だというのが6.7% どちらでもいいが34.8% となっていて、その値打ちを認められていたらしい。実際に内観をした生徒は、一人残らず内観がいい、内観は処罰ではないと言い切っています。

 (3)内観で人間が向上するというのは75.3% 女子だけでは何と92.9%です。 しないが9.0% どちらでもいいが14.6% 生徒たちも内観の魅力の何たるかをわかってくれていたんだなあ、と今回改めて思った次第です。


5.学校内観の方法
 この分校で私達が手掛けた内観者は延べ百人位でしょうか。ご存じの方もおられます自己発見の会で発行している『やすら樹』に「湯の里分校の内観者たち」として連載されている者の多くが、このときの生徒たちです。

 学校現場に内観を導入するにはどのような方法があるかについて、しばらくお話したいと思います。

 前に申し上げましたように、この湯の里分校での内観で使う屏風は、古襖の2枚貼りです。部屋は、農業実習室という昔牛や豚などの出産のときに、当番の生徒が寝泊りした6畳と3畳の二間と便所のついている手頃なものです。

 夜具は内観する生徒の持ち込み、食事は近所の食堂に頼みます。日曜日は店が休みなので、わが妻を動員しました。

 生徒の父母負担は、食事代だけです。

 面接者は全職員です。そのために面接に関しては、次の様に決めました。

 (1) 内観者様と思ってください。決して生徒だと思わないように。
 (2)屏風を開ける前に合掌礼拝、開けて合掌礼拝、報告を聞いて合掌礼拝、屏風を閉じて合掌礼拝。
 (3)懺悔報告はただ承り、指示・批判・賛否など行わない。質問があれば、池上先生に尋ねてくださいと言う。
 (4)懺悔報告は完全部外秘。

 授業の受け持ち時間を見計らって割り振りしておきます。内観者が複数のときは、面接以外の時間にも、内観の部屋に私語防止のために職員を配置します。泊まりは私以外は申し出制にしました。手当の出所がないからです。こうして整理してみると、私のような内観中毒者のような者がいないと、学校での集中内観というのは無理なことかもしれないなあという気がします。中毒者の現れを願うこと切です

 生徒に対しては、内観にはいる前に、調べ方と答え方を指導します。ことに答え方は、実際にやりとりを練習して、きちんと形式が飲み込めてから始めます。


6.学校内観のいろいろ
 (1)通学内観 私達はそれまで宿泊の内観でやっていましたが、だんだん無理が響いて参りまして、ひとつの工夫として通学内観という形をとるようになりました。これは普段どおり登校して内観実習室に入り、内観をし、自前の弁当を摂り、5時まで内観して帰るというものです。帰りにテープをもたせて、翌朝一番の面接で感想を聞かせてもらうということにしました。この方法で教育相談をやっていた友人は、相談室で内観をしてシンナーをやめさせることに成功した事例を報告しています。

 (2)家庭訪問での内観 登校できないあるいは登校しない生徒に対して、家庭訪問して内観面接を繰り返す方法を取ったこともあります。

 (3)小学校での内観 私の家内は小学校に勤めていまして、昼休みと放課後に希望者を募って「お母さんに対する内観」を繰り返しましたところ、2ヶ月くらいで喘息の子が助かり、いじめられっ子が強い子になったという体験をもっています。小学校の忙しさを緩和して内観教育を取り入れたら、成長の過程で多くの児童、生徒がつまずかずに生きていけるのにと残念でなりません。酒鬼薔薇少年も徹底的に内観すれば助かると断言できますし、小学校のころから内観しておればと思うばかりです。

 (4)教室での3分間内観 中学に勤めていた友人に1日3分でもいいからきみのクラスに内観を教えてみないかと勧めましたところ、帰りの会で毎日3分間内観をさせて、プリントの裏紙を使って書かせていたところ、クラスの雰囲気がすごくよくなってきたと言っていました。そのことを折にふれて宣伝していましたら、仙台の高校の先生や名古屋の中学の先生が、3分間内観をしての成果を内観学会で発表されています。最近では九州内観懇話会のメンバーで大分の高校の先生が毎日帰りの時間に「自己発見タイム」というのを設けて内観を教えてくださっています。やる気にさえなれば自分の方法で児童、生徒に内観を伝えることはそれほど難しくないと思われます。保育園や幼稚園でも工夫されているところもあったようです。

 (5) 簡易記録内観 私が定時制高校にいた時、時間不足の生徒を集めて、春休み、夏休み、冬休みを利用して、不足の時間だけ「簡易記録内観」をやってもらいました。B4の紙に、誰に対して、いつの、してもらったこと、して返したこと、迷惑かけたこと、感想という6項目にわけて記録する用紙を作りました。そして1時間に3区切り、1日4時間、1年から4年まで一つの教室に集めて、監督を一人置いてそれぞれ不足時間だけやってもらいます。親にしてもらうばかりで何も返していないという気づきと、自己を見つめる効果が出て面白い試みと思っています。


7.湯の里分校の内観者たち
 私達に内観で偏食が直りますよと教えてくれたA君。彼は肉類が全く食べれませんでしたが、豚肉と牛肉は内観中に食べることができるようになりました。

 二人目のB君はバイクの二人乗りがきっかけで通学内観をした生徒です。内観後は家の手伝いをどんどんやるようになって、内観はいいものだと親に認めさせました。母親は「一週間本当にありがとうございました。内観というのはできるもなら親もしなくてはいけないと思います。子供ばかり分かっていても、親がわけがわからなくてはどうにもならないと思います。生徒は誰でも受けていいと思います」と書いてくれました。

 次は、内観は繰り返せば繰り返すほど深くなることを教えてくれたC子さんの例です。彼女は好きな人ができてその人のところに家出を繰り返した子です。「前のは内観になっていなかったと思います。今度こそよく話し合って親や学校に心配かけないようにしたいと思います」と言い、卒業までの2年間に計6回の内観をしました。もし、停学等の処罰で臨んでいたら、退学していたに違いありません。卒業後晴れてその人と結婚しましたが、内観のおかげで悪者にならずに済んだわけです。

 いじめの問題もありました。不登校者が登校し始める、暴走族から足を洗うなどの成果もあります。内観して問題を自分に引き受けることができたら解決するんです。本日の総合テーマ「子供たちを取り巻く諸問題 いじめ・非行・暴力・不登校」は内観法で本当に解決します。

 吉本先生は、我々内観屋は内観者さまからいろいろ教わるんですといわれましたが、私も湯の里分校の内観者たちから多くのことを学びました。


(編集部注 本稿は昨年の北海道内観懇話会でご講演頂いた一部をまとめました。内観全般、吉本先生のことなど、感銘深いお話をして下さいましたが、この中から「学校内観」に限ってご紹介させて頂きました。)





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