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  子育て・いじめ・不登校・ひきこもり・暴力・アルコール・薬物依存・拒食・過食症・リストカットなどが社会問題となっています。これらの予防・解決に内観法、内観療法が有効であると考え、その予防・解決について考えます。

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内観効果の永続性
東京弁護士会所属 弁護士
波多野 二三彦

1.内観の永続効果 
 集中内観は一週間でめざましい効果を現わします。しかしその効果は何ヵ月後にはきれいに消失する場合がしばしばあります。内観法を開発した吉本伊信師はそのことを恐れていました。
ですから吉本先生はどなたに対しましてもことあるごとに、毎日内観することがいかに大事であるかを強調し続けました。

 しかし内観を日常的に毎日続けることは、凡人にはまず不可能なことだと思われます。

 ほとんどの人が日常内観をしない。数日やってすぐにやめてしまう。それが常です。

 一方、日常内観を全くしない場合でも、唯一回の集中内観効果が永続していると思われる事例は、特に医療として行われる集中内観ではしばしば見受けられます。

 内観によって一定の医学的な治癒・軽快の効果が発生し、元の病気は治まり再発せず、その治癒・軽快の状態が半永久的に続くという現象が起こります。この現象は今日すでに内観療法という医療の世界では常識になっているといえましょう。

 念のために申し上げます。内観法というものをクラシックな意味での精神修養法だとする視点・観点からいいますと、内観効果の本質は、医療とか犯罪者矯正のように一定限度のものではなく限りなく深遠な目標を目指すものです。ですから吉本先生の抱いていた危惧には十分な理由があるのです。そのことは忘れてはなりません。

 ここではそのような唯一回の集中内観で、疾病治癒・軽快といった程度の内観効果がなぜ発生するのかというその理由を、大脳生理学、臨床心理学などの科学的観点から考えてみたいと思います。

2.反復される記憶想起
 内観法は『内観三項目』というワンパターンな事項について、高頻度に反復想起するという、単純な記憶想起法が基本・土台になっています。

 動物の大脳神経は、単純でワンパターンな記憶伝達物質が神経回路を繰り返し高頻度に流れて行きますと、2〜3日の中には神経回路の接続が極端に増え、記憶を伝達する電気抵抗が急激に低下し、これに従いまして記憶想起が突如容易になるといわれています。

 それは、大脳神経の繋ぎ目を組成している『シナプス』の特性にもとづく現象です。
内観実習者がよくいいます。最初の三日間は古い記憶が思い出せず、ただ足がしびれて痛く、それが苦痛だった。しかし三日目を過ぎるころから、突然すらすらと昔の記憶がよみがえり、感動の涙さえ湧きだしましたと。

 そのような現象が上に申しましたシナプスの特性にもとづく特徴的な神経伝達の電気的・化学的変化によるものにほかなりません。大脳シナプスはそれだけでなく記憶想起の高頻度な反復によりまして、特徴的な形態学的変化を現します。

 以上の特徴的な大脳神経の変化は、大脳のはたらきについて書かれた専門書からとりました資料の第1図に出ていますのでご覧下さい。そこにはプラス方向に、丘のように腫れ上がった二つの曲線が書かれています。それは脳に高頻度刺激を与えますと、記憶をつかさどっているシナプスの電気抵抗が急激に低減することとともに、肥大したシナプスが相当長期間そのままの状態を維持することを証明する曲線です。2〜3日間の高頻度刺激の繰り返しによりまして、シナプスの長期増強は11日前後続きます。結合面積の増大は、その後20〜30年間も続くのです。そのことがこの図に示されています。

 大脳神経がこのようにかなり長期にわたる形態学的な変化をおこすことによりまして、内観特有の効果が大脳神経のシナプス部分に固定され、それが新しい記憶として貯蔵されるから、内観にもとづく医療効果も永続するというメカニズムがここに認められます。

 シナプスの電気抵抗の変化は、元はといえば、休止していたたくさんの回路が一気につながり、しかもシナプスが肥大してその結合面積が増大することから発生するのです。そのメカニズムは、最新の大脳生理学では、新しい記憶の固定として考えられています。

3.聖なる心像
 内観が効くという場合とは、精神・心理の面でどういう場合でしょうか。記憶回想量が多いとか、感動量が多いと言う場合はまさに効果的な内観というに値しましょう。

 しかしそれだけではまだ効果的な内観の要素の全てが満たされているとはいえないように思います。それに加えて内観者が集中内観によって「聖なる心像」を作ったかどうかということが、重要な効果要素になると思います。

 聖なる心像とは、一つの例で申しますと、多くのヤングが各自の心の中に作っていた〈HIDE〉のイメージのようなものです。先年〈HIDE〉が自殺した時、東京築地の本願寺の周辺には、何万人というヤングが葬列を作り、〈HIDE〉の遺影を見送った後ヤングたちは、路上にゴミひとつ残さず清掃して去ったといいます。平素は騒がしい彼らヤングをそうさせたのは、彼らが〈HIDE〉について聖なる心像を作って持っていたからでしょう。

 内観を実習してたとえば母の記憶をたぐって行きますうちに、現実の母親とは比べものにならないほどに美しい母像が全く新たなイメージとして現れ、それが強烈に記憶に固定されます。これこそが内観で現れる聖なる記憶心像です。

 聖なる心像は容易に消えません。その美しいイメージは巨大なエネルギーを持ち、内観実習者の心に、希望・感謝・法悦とともに大きな心的回転を引き起こすのです。

4.随時随所の日常内観
 毎日一時間ないし二時間行う日常内観はだれにもできないほどの難儀な修行です。

 最も効果的な内観とは、唯一回の集中内観でもって強力なエネルギーを持つところの、聖なる心像を作り心に留めておくことだと思います。それのできた内観者は、その心像を心の奥底に確実に貯蔵しているのです。平素の自覚といたしましては、貯蔵されているその心像は、多分とっくに消え去ってしまったとしか思えない程度の薄ぼんやりとしたイメージに止まっているでしょう。しかしそれは深い心の記憶貯蔵庫に、新しく、神聖で強烈なイメージとして保存されているのです。消えうせたように見えていましても、内観体験者が日常的に、ものの数分間想念を集中するだけで、たちまち再び心の中に現れてまいります。

 引き出されたその記憶心像はみにくい自己自身を有り体に映す鏡となり、かつての集中内観体験の時とほぼ同じように、随時随所で彼がちょっと想念を集中する間彼自身を顧みさせ、清浄な心に彼自身を引き戻すエネルギーを発揮いたします。

 多くの旅慣れた内観者は、自覚のあるなしにかかわらず、そのような随時随所の日常内観を、無意識のうちに巧みに行い、抑圧された自我を常に解放しているのです。

 このようにして多くの内観者は、ほとんど無意識のうちに習慣的に、自分の作った聖なる心像を鏡とし随時随所で日常的に内観し、効果を維持しているのだといえます。

 唯一回の集中内観だけでも、その時できた心像のエネルギーは、その後も強い力で人の心を動かします。心像の永続的な効果はほとんど消滅することがないのです。

 内観療法の世界で、内観効果が容易に消失しないというその大脳生理学的・臨床心理学的なメカニズムは、おそらくは以上のような仕組みであろうと想像されます。


図1 高頻度刺激によるシナプスの長期増強と結合面積増加の状況



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