不登校児の入院治療から学んだこと

〜早期の医療介入の重要性〜

 

医療法人耕仁会札幌太田病院 A2病棟

○菅原吉晃 森但臣 伊藤愛 根本忠典 菊地俊一 太田耕平

 

1.               はじめに

家庭内暴力を伴う不登校児に対し、病棟内内観療法を中心とした入院治療により、登校可能になった症例の経過について報告する。

2.               症例紹介

A氏、10代、男児。共働きの両親と兄弟2名の5人家族。小学校高学年時、いじめが原因で1年間の完全不登校の経験あり。中学入学後、クラブ活動をさぼったことを父親に叱責され退部した。次月から不登校気味となり、壁やベッドを叩く行為が出現。心療内科受診し、薬物療法を受けたが症状改善せず、その2ヶ月後には完全不登校。同時期、家のお金を盗んだり、両親への暴力、「死にたい」などの言動見られ、両親と来院し、「家庭内限局性行為障害」で入院となった。

3.               治療経過

入院時、興奮状態が顕著で暴力行為に及ぶことから隔離開始。同時に集中内観療法、ピア・カウンセリング(回復者による体験発表)を実施。入院2日目、入院前の自己中心的行動を謝罪し、「両親のおかげで生活できた」と感謝の言葉を述べた。入院4日目には隔離解除可能となった。病棟内内観療法修了後、家族内観療法を行った。A氏は「父母から自分の良い点、悪い点を伝えてもらいスッキリした。不登校になってどれだけ親に心配をかけたのか、この家族内観で気づいた」と述べた。一方、父母は「入院により、親の責任感から自分を責めたが、そうではなかった。家族が一つになるための時間を与えて頂いた。感謝の気持ちに変えることができた」と話し、互いに理解し合えことを認めた。家族内観終了後、当院より登校を開始した。父母が交代で付き添い通学し、入院12日目に退院した。

4.               考察

A氏の家庭では、父性の欠如、母の過保護、患者の自己中心性が伺えた。病棟内内観療法、家族療法により、被愛事実を認識し、父母への陰性感情が軽減された。更に家族内観を通した調整により、家族全体が健全化された。家族内観修了後、父母の送迎により、当院から5日間登校した。帰院後は、看護師、心理士などが登校できたことをよく褒め、将来の職業などについて考えることを促した。このような関与を行う中で、目標の明確化と継続した登校が可能となった。退院後5ヶ月が経過したが、家庭内暴力は鎮静した。当初、きちんと登校していたが、最近は学校を休みがちになっており、今後継続した外来治療、更に再度入院治療の必要性も検討される。特に思春期症では、2〜3度の入院治療で安定する例も多々経験している。不登校に於いて、家庭や学校のみで解決しようとする傾向が強いが、適切な解決には、早期の医療的介入が時に有効であることを改めて認識した。今後も、外来受診、家族会などを通し、A氏を含む家族全体の支援を継続したい。