不登校・ひきこもりを呈した高校生に対する治療経過

 

医療法人耕仁会札幌太田病院

○佐藤渉 篠田崇次 伊藤愛 濱野宏亮 太田耕平

 

 

1. 症例:10代後半男性。

2. 主訴:ひきこもり、いじめ、抑うつ、将来への不安。

3. 家族歴・生育歴:同胞二人中第二子として札幌に出生。父、母、姉の四人家族。現在、父親は東京で単身赴任中、母親はうつ症状のためにAクリニックに通院している。

4. 現病歴:小学校五年時、担任との相性が合わず一時的に不登校になった。突然夜中に叫び声を上げたり、涙を流すことがあった。その後しばらくして再登校するようになった。中学生になる時に父の転勤先の大阪へ転居。入学式は登校したが、その後不登校となった。外出できず昼夜逆転の生活になり、夜中に体を震わせ「どうしたらいいんだろう」「もういやだ」と呟くことが続いた。その後声が出なくなり「あ」「う」としか話せなくなった。自宅近くのBクリニックを受診し薬物療法にて失声は改善。しかし、二ヶ月ほどして不安が強くなり、将来のことを思い悩んで身動きが取れなくなったり、壁を蹴るなどの粗暴行為が見られた。中学一年時、C病院に二ヶ月間入院。その後も不安・うつ症状が改善せず同病院を二ヶ月間再入院。主治医から札幌に戻ることを勧められ、中学三年時に札幌に転居。D高校に進学しアルバイトも10か月間したがアルバイト仲間にいじめられ辞めた。その後はうつ状態、ひきこもりが続き当院受診となった。

5. 入院後経過:入院後、数種類処方されていた内服薬を単剤に減らして継続し、自室集中内観療法を開始した。家族への感謝と反省を実感し、退院後は高卒の資格を取るために通信制の学校に行きたいと前向きに考えられるようになった。母親、父親との家族内観も開始し、お互いに話し合うこと、助け合うことが必要だということを考えさせられたようだった。入院後は院内のデイケア活動にも除々に参加するようになり、入院一ヶ月後より病院から母親の付き添いの下で登校できるようになった。デイケアに参加しながら学校に通い、一人で登校できるようになり入院二ヶ月後に退院となった。今後は授業の出席時間を増やしていく予定である。

6. 考察:小さい頃からとても大人しい性格だったようで、小学生の時に担任の先生と合わなかったことや父親の単身赴任などがきっかけで不登校となった。新しい場所での生活で環境が変わったこと、父親が単身赴任中で家庭にいなかったことも不登校、引きこもりの原因になったのではないかと思われる。実際の学校生活や同級生との関わりがどのようなものであったのかはっきりとはわからないが、アルバイト先でいじめられたり、対人関係のコミュニケーションが上手くできなかった可能性も考えられる。はっきりとした幻覚・妄想などはなかったが、被害的に考える傾向もあり精神科的疾患を有する可能性も否定できない。今後、生活していく中で対人関係や環境の変化などがきっかけとなって不登校、ひきこもりの生活に戻ってしまうことも考えられるため、引き続き経過を見ていく必要がある。