不登校、リストカットなどを呈した女子高生に対する治療経過

医療法人耕仁会札幌太田病院 医師

長岡 徹

1.症例:10代後半女性 H氏 入院日:平成X年5月。

 

2.目的:これまでに自殺未遂、リストカットを繰り返し、精神科入院歴もあり薬物療法で奏効しなかった10代の女性が、内観療法を通じて、希死念慮が喪失した症例を経験したので報告する。

 

3.主訴:死にたい、リストカット、絞首。

 

4.現病歴:小学校の頃は、成績も優秀で友人も多い方だった。中学校に入学後、不登校になりがちになり、長兄の影響で飲酒、喫煙、万引きを始めた。中学校1年生の頃よりいじめに遭い、死にたいと思うようになった。それ以降、入院するまでリストカットは続いていた。

平成X年4月にA病院を退院後、家出をして再度、リストカットをして再びA病院に搬送された。その後、A病院で他患とのトラブルがあり退院し、S病院に入院した。

S病院では、入院時に母子分離が必要との判断で、当院受診時までの1か月以上母親とは会っていなかった。S病院を退院し、当院受診の3日前に自立支援施設に入所した。しかし、施設入所した当日の夜にトイレでズボンの紐を抜き、自分の首をしめたためH病院に搬送され、退院後児童相談所の担当者とともに当院受診した。

 

5.生育歴:同胞3人中第3子として函館にて出生。母親はこれまでに2度の結婚と離婚をしており、1度目の夫の時に姉、兄が生まれている。本人は結婚していない男性と母の間に生まれた子である。この男性は小さい頃、3人の子供に暴力をふるい、本人が2歳のころ家を出て行った。

母親の身体が弱いこと、また精神科への入院を含む治療のため、2歳より小学校4年生まで函館の児童養護施設に、兄2人と3人で入所。小学校4年生で母の交際相手の男性と同居するために恵庭に転校、小学校卒業後、母が交際相手と別れたために西区に引っ越しをする。当時、高校に入学するも入学式当日にリストカット行い登校しなかった。

 

6.入院後経過:入院当日は、母親とともに宿泊してもらい、翌日より病室で内観療法を開始。

また入院当日より箱庭療法も継続して行っていた。内観途中には、再度リストカットしてしまいたという感情になることもあると本人より訴えもあったが、少しづつではあるがそのような感情も次第になくなっていった。内観終了後には、自分の身体の大切さ、家族の大切さ、命の大切さに気づいたことを打ち明けてくれた。内観中に過去のことを思い出すのがつらい場面もあったのは事実であるが、今後、リストカット、自殺行為はしないと意思を伝えてくれた。

 

7.考察:生まれてすぐに施設に預けられ、かつ父親がいないこと、また母親も病気であり両親から愛情を受けた記憶がほとんどない症例であった。本人の問題というより周囲の大人の問題による影響が大きいと思われた。しかし、このような不遇な中でも内観を通じて、軽度ではあるが親、兄弟への感謝の気持ちを持つことで本人による自傷行為を改めようという前向きな気持ちを見出せ得た。

 

※地名、学年などは個人情報保護のため、変更しています。