心豊かに人生を生きるために

北海道家庭生活総合カウンセリングセンター理事長

医療法人耕仁会札幌太田病院顧問

村田 忠良

77年を生き、50年余精神科診療とカウンセリング業務に従事して、精神衛生(精神保健)の定義を「心豊かに人生を生きるための生活作法である」と考えてきた。

因みに私は「病む心の手当」には診療を、「戸惑う心の手当」にはカウンセリングを、と考えている。

 「心豊かに」というのは「ゆとりある心で」ということであり、「生活作法」とは「身についていて、日常生活で生かされる」という意味である。

「ゆとりある心」でと強調するのは、物事の本質は心にゆとりがないと見えて来ないし、本質を考えるためには「ゆとりある心」が必要だと実感しているからである。

 「ゆとりある心で生きるためには、どうしたらよいか」を考えつつ生きることが精神衛生の実践なのだと考えるのだが、そのための2、3のことを次に述べたいと思う。

夏目漱石の『草枕』の冒頭に「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に、人の世は住みにくい」とあるが、人間関係を円満に保つための要諦だと思う。精神衛生は、人間関係を好ましい状態に保つための知恵と工夫と実践なのだと思うが、寸言を以ってその要を指摘していることに驚嘆する。

具体的には無罰的な対応での人間関係を大前提とすること、次に共感ということを重視し、その習練を続けること、第三には精神的な視野狭窄を打破するために、視点を変えて要点の見直しをすること、第四は楽天的なベースの上で思索し、問題解決に臨むことである。

そして何よりも自分自身を成長させるために、読書と思索と対話を重ねることだと思う。それが人格成長の最も効率的な生活作法なのだと考えている。そしてまた私の心の底にいつも基調音としてあるのは、ラ・マルチーヌの「人生とは死を以って始まる未知の国への序曲である」の言葉である。これらについて、皆様と思索し対話したいと思っている。